「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」の全体像と採択の仕組みとは?

補助金のなかでも代表的な「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」は、予算の規模も大きく、設備投資を行う際に検討する企業が多い補助金です。

今回は、この「ものづくり補助金」について、全体像と事業計画書の留意点を解説します。

1. 補助金の採択・不採択の仕組みとは?

 

はじめに、補助金申請をした事業計画が採択される仕組みを説明します。

申請された事業計画は、採点を委嘱された専門家が採点します。原則として、事業計画を点数が高い順から並べ、補助金の予算に応じて採択していきます。

2. 公表されている審査項目が採点基準

皆さんの会社が申請する補助金の採択率を高めるためには、点数が高くなるように事業計画を作成する必要があります。

そのために、留意しなければならないことが「審査項目」です。

審査項目は、ただ採点するためだけでなく、税金である「補助金」の効果や実現性を見ていくものです。

3.採択率を上げるには「審査項目」の「質問」に対して「回答」を書くこと

では、実際に審査項目を見ていきましょう!

今回は、平成29年度補正予算の「ものづくり補助金」公募要領(東京都)を参考に見ていきます。

公募要領の2829ページ目に審査項目のページがあります。そこには「採点基準」5つのカテゴリーに分けられています。これらの項目についての「回答」を書いていくことで加点される仕組みになっています。

(1)補助対象事業としての適格性

 

これは、「補助金の趣旨に合致しているかどうか」を確認するものです。

その意味では、「採点項目」というより、そもそも補助金の申請ができるかどうかの資格の有無の確認となります。

(2)技術面

 

これはわかりやすくアピールして点を取りたい採点基準です。

前述したように、審査項目を「質問」と考え、事業計画において問いに対する「回答」を提示するイメージで事業計画を策定します。まず、技術面では、4つの項目が挙げられています。

①「新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイデアの活用等を含む))の革新的な開発となっているか」

 

 

 

この項目で重要なポイントは「革新的な開発(革新性)」です。

ものづくり補助金の事業計画として最も重要な点が「革新性」です。

「回答」として「こういう点で革新性があります」と伝えることがポイントです。

なお、「革新性」の有無の判断は難しいところですが、「競合他社では実施していない」ことが最低限のハードルと思って下さい。

②「サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか」

 

この項目は、2つの部分から成り立っています。

抜粋すると「開発における課題が明確になっている」とともに「補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定している」の2つです。これらの項目が「問い」です。それぞれに対し、わかりやすく事業計画に反映させられているかが重要です。

③「課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか」

 

 

これも同様で、「課題の解決方法が明確」かつ、「課題の解決方法が妥当」、さらにどのような「優位性」があるのかを具体的に表現することが重要です。

④「補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか」

 

補助事業実施のための「体制」つまり必要な社内での役割分担や社外との協働体制を記載します。そして、補助事業を実施するための「技術的能力」を、「経歴」や「資格」などの裏づけを基に審査員に伝わるように記載します。

(3)事業化面

 

次に、事業を実際にやっていけることを事業計画書で示します。

①「事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか」

 

多くの場合、「経歴」や「資格」と共に、「体制図」「連携図」で表現します。

②「事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か」

 

ここでの「質問」は「市場ニーズを考慮する」と「補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー」「補助事業の成果の事業化が寄与するマーケット」「市場規模が明確」です。

ここでの「回答」としては、具体的な顧客(ユーザー)からの要望、その要望を実現することによる顧客の問題解決、事業化によって貢献できる市場をできるだけ詳細に記載します。

③「補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か」

 

まず、補助事業の成果が「価格的・性能的に優位性」があり「価格的・性能的に収益性」があることを示す必要があります。競合他社とQ(品質)、C(価格)、D(納期)面等で比較し、優位性を明確にします。

「事業化に至るまでの遂行方法」と「事業化に至るまでのスケジュール」については「遂行方法」をいくつかのステップに分け、そのステップをいつ行うのか、ガントチャートで表します。ガントチャートに「担当者」の項目を入れ、誰が主で実施するのかを記載します。

④「補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか(【革新的サービス】【ものづくり技術】いずれにおいても、3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成する取組みであるか)」

 

ここでは、3年~5年の事業計画を表にします。

ポイントになる「質問」は、前半では「補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模が高いか」「補助金の投入額に対して想定されるその実現性等が高いか」ということですので異常値にならないよう留意して下さい。

 

また、売上高の内訳である「単価」及び「個数」、そして原価等コストの根拠を年度ごとに具体的に記載するようにして下さい。予測数値ではありますが、事業計画の実現性を見る上で重要なポイントですので留意が必要です。

結果として、事業計画の中で「付加価値額」が年率3%及び「経常利益」が年率1%の向上を達成していることは当然の条件となります。

(4)政策面

 

ここは「中小企業が補助金を使って事業を行うことの意義」に関する項目です。

①「厳しい内外環境の中にあって新たな活路を見出す企業として、他の企業のモデルとなるとともに、国の方針(「経済の好循環実現に向けた政労使の取組について」において示された賃金上昇に資する取組みであるか等)と整合性を持ち、地域経済と雇用の支援につながることが期待できる計画であるか」

 

要旨をまとめると「他の企業のモデルとなる」「賃金上昇に資する取組である」「地域経済と雇用の支援につながる」の3つが挙げられます。

政策として実施される補助金ですので、「他の企業のモデルとなる」つまり「良い取り組みだとして真似できるモデル」であることが重要です。実際、採択されると社名・事業計画名等が公表されますし、参考になるモデルケースとして事例集に掲載されることがあります。

②「金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。」

 

地域の金融機関から資金調達が見込めるということは、事業の実現性が高い(金融機関としては回収可能性)ということです。早めに金融機関に打診し、内諾を取っておきましょう。

まとめ

ものづくり補助金をはじめとする補助金の申請をするにあたっては、「審査項目」がとても重要です。なぜなら、審査員は「審査項目」に沿って採点するからです。

 

補助金の事業計画書を策定する際には、常に審査項目という「質問」に対する「回答」がしっかり記載されているか確認しながら進めて下さい。