一般社団法人東京都中小企業診断士協会「終活ビジネス研究会」

ニューノーマルにおける葬儀ビジネスのあり方を考察

一般社団法人東京都中小企業診断士協会「終活ビジネス研究会」(代表:小泉悟志)は、「ニューノーマルにおける葬儀ビジネスのあり方」について令和3年5月24日に発表しました。

1. 新型コロナにより厳しさを増す葬儀業界の現状

日本は高齢化社会がますます進んでおり、その影響で2040年頃まで死亡者数は増加の一途をたどると予想されている。そうした背景が一因となり、葬儀業界では2000年以降、異業種からの参入も含め事業者は増大してきた。しかしながら、葬儀に対する考え方の変化や単身世帯・核家族の増加といった社会生活の変化を背景に、年々、葬儀規模の縮小傾向が強まり、葬儀一件あたりの単価は2008年頃から下落が続いている。そうした中で昨年よりコロナ問題が発生し、葬儀業界は一層厳しい事業環境に置かれている。

日本の65歳以上人口と死亡者数の推移

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」より作成

2020年4月に初の緊急事態宣言が発令となり、社会生活のあらゆる場面で人と接することへの自粛が求められた。葬儀も例外ではなく、通夜・告別式を行わずに火葬とする選択も多くとられたことから葬儀件数は大きく落ち込んだ。その後は、葬儀においても徹底した感染対策を講じた上で実施するようになったことから、直近ではコロナ前の水準まで戻ってきているが、会葬者の減少や飲食の中止などから、単価の低下にはさらに拍車がかかった状況と言わざるを得ない。

日本の65歳以上人口と死亡者数の推移

出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」より作成

2. ニューノーマル時代の葬儀の形態

コロナ問題が収束しても、社会関係性よりも「個」を志向する家族葬が主流となることは変わらないであろう。では、このまま葬儀単価は低下を続け、葬儀ビジネスは窮地に追い込まれる一方なのか。

当研究会では、そうした状況を打開するキ-ワードは「高付加価値志向」にあると考えている。儀礼的な大規模葬儀を行う志向は薄れてきている一方で、「大切な家族とのお別れは、悔いないものとしたい」「故人の好きなもので見送りたい」といった思いは多くの人が持っている。

亡くなった後の葬儀をしてもらいたいかアンケート

3. 今後の葬儀ビジネスのあり方

「個」を重視する時代だからこそ、今後の葬儀は画一的なものではなく、1人1人の志向に沿ったサービスが求められる。近年では、自身のエンディングに積極的に向き合う傾向も強くなり、葬儀社としては生前に接点を持つ機会も広がってきた。また、葬儀自体の規模は小さくても、故人の生前の趣味趣向に沿ったオリジナルな葬儀の演出も提案できる。コロナ禍で動き始めた葬儀に関わる各種サービスのネット化や葬儀へのリモート出席の仕組みなどもさらに工夫の余地があるだろう。葬儀後も継続的な供養のサポートも新しい形態が生まれつつある。つまり、「顧客中心のワンストップソリューションの提供」が葬儀ビジネスの高付加価値化につながるものであり、そうした経営改革が急務であると当研究会では考えている。

亡くなった後の葬儀をしてもらいたいかアンケート

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